資産配分を決めて投資を始めても、株式や債券などの価格が動けば、時間とともに当初の割合はずれていきます。たとえば「株式60%・債券40%」で始めても、株式が大きく値上がりすれば、気付かないうちに株式の比率が高くなり、当初より大きな値動きを受けやすい状態になることがあります。
そこで行うのがリバランスです。リバランスは、値上がりする資産を予想して利益を増やすための売買ではありません。あらかじめ決めた資産配分とリスクの取り方へ戻すための管理です。
この記事では、リバランスの意味、行うタイミング、追加資金だけで調整する方法、売却を伴う方法、NISAや課税口座で確認したい点まで順番に整理します。
リバランスとは、崩れた資産配分を元の方針へ戻すこと
リバランスとは、価格変動などによって当初の割合からずれたポートフォリオを、あらかじめ決めた配分へ近づけることです。J-FLECの「投資の時間」でも、株式・債券・投資信託などの価格変動で崩れた割合を元の状態に戻すこととして説明されています。
参考:J-FLEC「ポートフォリオのリバランスのタイミングを教えてください」
たとえば、長期投資用の300万円を株式60%・債券40%で始めたとします。
- 株式:180万円
- 債券:120万円
- 合計:300万円
その後、株式が240万円、債券が110万円になった場合、合計は350万円です。株式の割合は約68.6%、債券は約31.4%となり、最初の60%・40%からずれています。
このとき株式を約210万円、債券を約140万円に近づければ、再び60%・40%に戻せます。これがリバランスの基本的な考え方です。
ただし、60%・40%が誰にでも適した割合という意味ではありません。先に必要なのは、自分の家計、投資期間、目的、リスク許容度に合った目標配分を決めることです。資産配分そのものをまだ決めていない場合は、「資産配分(アセットアロケーション)の決め方」から確認してください。
リバランスの目的は「儲けを増やすこと」ではなくリスク管理
リバランスをすると、値上がりした資産を一部売り、相対的に値下がりした資産を買う形になることがあります。そのため「高く売って安く買う方法」と説明されることもありますが、将来の価格は分かりません。
値上がりした資産がその後も上がり続ければ、リバランスをしなかった方が運用成績は高くなる場合もあります。J-FLECも、リバランスが常にプラスに働くとは限らないと案内しています。
そのため、リバランスの役割は「次に上がる資産を当てること」ではなく、自分で決めたリスクの範囲を維持しやすくすることと考えた方が整理しやすくなります。
たとえば株式60%を、自分の家計と投資期間から受け入れられる上限として決めていたのに、値上がりによって75%まで増えていれば、当初想定していたより株価下落の影響を受けやすくなっています。リバランスは、そのずれを元の方針へ戻す作業です。
リバランスを始める前に、目標配分と確認範囲を決める
リバランスで迷いやすい原因の一つは、「何を基準に戻すのか」が曖昧なことです。まず次の2点を決めます。
- 目標とする資産配分
- どこまでを一つのポートフォリオとして確認するか
証券口座が複数ある場合、口座ごとではなく長期投資用の資産全体を合算して見る方が実態を把握しやすいことがあります。たとえばA証券では株式、B証券では債券を持っているなら、片方だけを見ても資産配分は分かりません。
一方で、生活費や生活防衛資金まで投資ポートフォリオの現金として混ぜると、実際の投資リスクが分かりにくくなります。家計のお金と投資用のお金は役割を分けて考えます。
この考え方は、「家計と投資を分けて管理する理由」で詳しく整理しています。
リバランスのタイミングは2つに分けて考える
リバランスのタイミングには、大きく分けて「一定期間ごとに確認する方法」と「配分のずれが一定以上になったら確認する方法」があります。
1.一定期間ごとに確認する
半年に1回、1年に1回など、あらかじめ確認日を決める方法です。相場が大きく動いたから急いで方針を変えるのではなく、決めた時期に淡々と確認できます。
毎月の資産チェックでは残高や割合を記録するだけにし、実際にリバランスを検討するのは年1回など別のタイミングにする方法もあります。日々の値動きに反応して頻繁に売買することを避けやすくなります。
毎月の確認項目は、「毎月の総資産チェックを続けるメリットと確認ポイント」も参考になります。
2.配分が決めた幅以上ずれたら確認する
もう一つは、「目標から一定の幅以上ずれたら調整する」と事前に決める方法です。たとえば株式60%を目標にしているなら、どの程度のずれまでは何もしないかを先に決めます。
重要なのは、相場を見ながら都合よく基準を変えないことです。「上がっているから今回は放置する」「下がって怖いから基準を狭くする」と後から変更すると、リバランスではなく相場予想に近くなります。
期間型でも乖離型でも、正解が一つに決まっているわけではありません。自分が続けられる確認頻度と、売買コストや税金を考慮してルール化しておくことが大切です。投資ルールを文章に残す方法は、「投資ルールを文章にしておくメリット」で解説しています。
リバランスの方法は3つある
方法1:追加資金を不足している資産へ回す
積立を続けている場合は、割合が低くなった資産へ新しい資金を多めに回すことで、売却せずに配分を近づけられることがあります。
先ほどの例では、株式240万円・債券110万円で合計350万円でした。ここへ新たに50万円を債券へ追加すると、株式240万円・債券160万円・合計400万円となり、株式60%・債券40%へ戻せます。
追加資金によるリバランスは、保有商品を売らずに調整できるため、売却に伴う税金や手数料を抑えられる場合があります。J-FLECも、新しい資金を割合の小さい部分へ追加する方法を紹介しています。
ただし、ポートフォリオが大きくなると毎月の積立額だけではずれを戻しにくくなることがあります。数千万円の資産に対して毎月数万円を積み立てても、大きな配分差はすぐには埋まりません。
方法2:増えすぎた資産を売り、不足している資産を買う
追加資金だけで戻せない場合は、目標より増えた資産を一部売却し、目標より少ない資産を買う方法があります。先ほどの350万円の例なら、株式を約30万円売って債券を約30万円買えば、株式210万円・債券140万円となり、60%・40%に戻ります。
ただし、売却には税金や手数料が関係する場合があります。課税口座で利益が出ている上場株式等を売却すると、譲渡益は課税対象になることがあります。国税庁は、上場株式等の譲渡益について申告分離課税の仕組みを案内しています。
実際の税務は口座区分、損益、他の取引などで変わるため、売却前に利用している金融機関や国税庁の最新情報を確認してください。
方法3:追加資金と売却を組み合わせる
すべてを一度に売買せず、まず追加資金を不足資産へ回し、それでもずれが大きければ一部だけ売却する方法もあります。
たとえば「積立額の配分変更で半年間調整し、それでも目標から大きくずれていれば売買する」と決めておけば、売却回数を抑えながら配分を管理できます。
NISAでリバランスするときの注意点
NISA口座で保有している商品を売却すること自体は可能です。ただし、売却したからといって、その売却分を同じ年に無条件で買い直せるわけではありません。
金融庁によると、2024年からのNISAでは、商品を売却した場合、売却した商品の簿価(取得金額)分の非課税保有限度額が翌年以降に再利用できる仕組みです。その年の買付けは、つみたて投資枠・成長投資枠それぞれの年間投資枠の範囲で考える必要があります。
参考:金融庁「NISAを知る」
そのため、NISA内で頻繁に売却してリバランスしようとすると、年間投資枠の使い方が複雑になることがあります。積立を続けている人なら、まず新しい買付けを不足資産へ寄せて調整できないか確認する方法があります。
また、NISAは家計の安全資金を投資へ回すための制度ではありません。リバランスのために生活防衛資金まで追加投資へ回さないことも重要です。詳しくは、「NISAを続けるために生活防衛資金を残す理由」で整理しています。
「リバランス」と「資産配分そのものの見直し」は分ける
ここは混同しやすいポイントです。リバランスは、基本的に今の目標配分を維持するための調整です。一方、収入、家族構成、住宅購入、教育費、退職、投資期間などが変わり、そもそも目標配分が合わなくなった場合は、資産配分そのものを見直します。
たとえば株式60%・債券40%を目標にしていた人が、数年後に大きな支出を予定するようになり、値動きを抑える必要が高まったとします。この場合、60%・40%へ戻すだけではなく、家計と目的から新しい配分を考え直す必要があります。
逆に、相場が下がって怖くなったという理由だけで目標配分を変更すると、安値でリスク資産を減らす行動につながる可能性があります。配分を変える理由は、相場ではなく自分の家計・目的・許容できる損失の変化から説明できるか確認します。
自動リバランスを使う場合も全体の配分を見る
バランス型投資信託やロボアドバイザーなど、サービスや商品の中で資産配分を調整してくれる仕組みもあります。ただし、自動でリバランスされているからといって、家計全体の資産配分まで自動的に整うわけではありません。
たとえばロボアドバイザー内では株式と債券の比率が維持されていても、別の証券口座で株式を大量に保有していれば、投資資産全体では株式比率が高いままです。
ロボアドバイザーの役割と家計資金の分け方は、「ロボアドは家計のクッションになる?現金との違いと資産運用での役割」も参考になります。
リバランス前のチェックリスト
- 目標とする資産配分を数字で決めているか
- 生活費・生活防衛資金を投資資産と分けているか
- 複数口座を含めた投資資産全体の割合を確認したか
- リバランスを行う時期またはずれ幅を事前に決めているか
- 追加資金だけで調整できないか確認したか
- 売却する場合の税金・手数料を確認したか
- NISAの年間投資枠と非課税保有限度額の扱いを確認したか
- 今回の変更がリバランスなのか、目標配分そのものの見直しなのか区別できているか
この項目を先に確認しておくと、相場が大きく動いたときに感情だけで売買することを減らしやすくなります。
まとめ:リバランスは「元のルールへ戻る作業」と考える
リバランスは、値上がりする資産を予想するための売買ではなく、価格変動で崩れた資産配分を、自分で決めた方針へ戻すための管理です。
実際に行うときは、まず目標配分を明確にし、一定期間ごとに確認するのか、一定のずれが出たら確認するのかを決めます。そのうえで、追加資金による調整、売却と買付け、両方の組み合わせから負担の少ない方法を選びます。
特にNISAや課税口座では、売却に伴う制度上の扱いや税金を確認してから動くことが大切です。相場が動くたびに配分を変えるのではなく、家計と投資目的から決めたルールへ戻るための仕組みとしてリバランスを使うと、長期の資産管理を続けやすくなります。
免責事項
この記事は、資産配分、リバランス、NISA、税務に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品、資産配分、売買方法を推奨するものではありません。投資には元本割れを含む損失の可能性があります。税制や制度は変更される場合があるため、実際の売買や税務判断では金融庁、国税庁、金融機関等の最新情報を確認し、必要に応じて専門家へご相談ください。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。
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