投資を始めると、「自分はどのくらいリスクを取ってよいのか」で迷うことがあります。株式の割合を何%にするか、値下がりにどこまで耐えられるかを考えても、実際に相場が下がるまでは自分の感覚が分からないことも少なくありません。
そこで大切なのは、リスク許容度を「20%下がっても平気か」といった気持ちだけで決めないことです。生活費、近い将来に使うお金、収入の安定性、投資額を円で見たときの損失額まで含めて考えると、自分に合わない取り過ぎを避けやすくなります。
この記事では、2級ファイナンシャル・プランニング技能士の知識も踏まえながら、初心者が自分の家計からリスク許容度を整理する手順を、具体的な金額例とともに解説します。
投資の「リスク」と「リスク許容度」は別のもの
投資でいうリスクは、単に「危険」という意味ではなく、収益がどの程度上下に振れる可能性があるかという不確実性を表す言葉として使われます。一方、リスク許容度は、その値動きを自分がどの程度受け入れられるかという考え方です。
金融庁も、資産形成では家計管理やライフプランニングを考えたうえで、預貯金と投資を目的に応じて使い分けること、投資には元本割れのおそれがあることを説明しています。
つまり、「値下がりが怖くないから多く投資できる」とは限りません。精神的には耐えられても、半年後に使う予定のお金まで投資していれば、必要な時期に値下がりして売却せざるを得ない可能性があります。反対に、相場の値動きが苦手でも、生活資金を十分に分け、投資額を小さくすれば無理なく続けられる場合があります。
参考:金融庁「資産形成の基本」
同じ20%下落でも家計への影響は人によって違う
リスク許容度を考えるときは、下落率だけでなく「いくら減るか」を円で確認することが重要です。
- 投資額100万円が20%下落:評価額は80万円、含み損は20万円
- 投資額500万円が20%下落:評価額は400万円、含み損は100万円
- 投資額1,000万円が20%下落:評価額は800万円、含み損は200万円
すべて同じ20%の下落ですが、家計に与える印象は大きく違います。「20%なら耐えられそう」と考えるだけでなく、「自分の資産が100万円減っても投資方針を変えずにいられるか」「その時に生活で困らないか」と置き換えてみると、現実的に判断しやすくなります。
なお、20%という数字は考え方を整理するための例であり、将来の下落幅を予測したものではありません。実際の値動きは商品や市場環境によって異なり、これより大きく下落することもあります。
リスク許容度は3つに分けて考える
ぴーすけブログでは、リスク許容度を「気持ち」だけで考えず、次の3つに分けて整理する方法をおすすめします。
1.家計として損失に耐えられるか
最初に見るのは、投資資産が値下がりしても生活に支障が出ないかです。毎月の生活費、生活防衛資金、数年以内に予定している大きな支出を先に分けます。
たとえば金融資産が400万円あっても、生活防衛資金として120万円、1年以内に使う予定のお金として80万円が必要なら、400万円すべてを「投資できるお金」と考えるべきではありません。残り200万円を基準に、どの程度を値動きのある資産へ回すかを考えるほうが家計との整合性を取りやすくなります。
生活費と投資資金の分け方は、家計と投資を分けて管理する理由でも整理しています。
2.心理的に値下がりに耐えられるか
家計に余裕があっても、値下がりが大きなストレスになり、毎日価格を確認したり、怖くなって売却したりするのであれば、実際のリスク許容度は高くない可能性があります。
「損しても生活できる」と「損失を見ながら保有を続けられる」は別です。最初は少額で値動きを経験し、自分がどのように感じるか確認する方法もあります。
運用会社の初心者向け解説でも、リスク許容度は値下がりによる心理的な負担をどこまで受け入れられるかを考えることが重要とされています。ただし、気持ちだけでなく投資目的や使う時期も合わせて確認する必要があります。
3.そのお金をいつ使うのか
使う時期が近いお金ほど、大きな値動きを受け入れにくくなります。来年の車購入費と、20年以上先の老後資金を同じ資産配分で管理する必要はありません。
近い将来に使うことが決まっている資金は、値上がりを期待することよりも、必要な時期に使えることのほうが重要です。一方、長期間使う予定がなく、途中の値下がりにも家計が耐えられる資金なら、長期の資産形成を検討しやすくなります。
家計からリスク許容度を確認する5つの質問
具体的には、次の5つを順番に確認すると整理しやすくなります。
- 生活防衛資金は投資資金と別に確保できているか
- 3年程度以内に使う可能性が高いお金を投資に混ぜていないか
- 収入が減った場合でも積立や生活を維持できるか
- 投資資産が20%、30%下がったと仮定したとき、損失額は何円になるか
- その損失額を見ても、生活と投資方針の両方を維持できそうか
4番目と5番目では、割合だけでなく必ず円換算するのがポイントです。たとえば300万円を投資しているなら、30%下落した場合の評価額は210万円で、含み損は90万円です。「90万円減っても生活資金は足りるか」「不安になって全部売りたくならないか」と考えます。
30%という数字もストレステスト用の仮定です。「最大損失は30%」という意味ではありません。自分にとって無視できない値下がりをあえて数字にして、家計への影響を確認するために使います。
「許容できる損失額」から投資額を逆算する考え方
もう一歩具体的にしたい場合は、「いくら投資するか」から考えるのではなく、「いくらまでの評価損なら家計と心理の両方で耐えられそうか」から逆算する方法があります。
例として、生活資金などを除いた投資可能資金が300万円あり、「一時的に60万円程度の評価損なら生活には影響せず、方針も維持できそう」と考えたとします。仮に30%下落する場面を想定するなら、計算上は200万円の投資資産が30%下落すると60万円の評価損になります。
300万円すべてを値動きの大きい資産にするのではなく、まず200万円程度までを一つの検討ラインとして、残りの100万円をどこに置くか考える、といった使い方ができます。
これは最適な資産配分を求める公式ではありません。実際の市場は想定以上に動く可能性があり、商品ごとに値動きも異なります。ただ、「なんとなく株式80%」と決めるより、自分が受け入れられる損失額から考えることで、家計に根拠を置いた資産配分を作りやすくなります。
リスク許容度を決めるときのよくある失敗
年齢だけで決める
若いほど投資期間を長く取りやすい傾向はありますが、同じ30歳でも、独身で固定費が低い人と、住宅ローンや教育費を抱えている人では家計の余裕が違います。年齢だけで株式比率などを決めると、実際の生活状況と合わない可能性があります。
相場が上がっているときの気分で決める
投資資産が値上がりしているときは、「もっとリスクを取れそう」と感じやすくなります。しかし、リスク許容度を確認したいのはむしろ下落時です。上昇局面の気分ではなく、具体的な損失額を置いて考えるほうが現実的です。
NISAなら損しにくいと考える
NISAは投資による利益が非課税になる制度ですが、投資商品の価格変動をなくす制度ではありません。生活防衛資金まで使って非課税枠を埋めると、急な支出時に資産を売却する可能性があります。
この点は、NISAを続けるために生活防衛資金を残す理由で詳しく解説しています。
一度決めたら変えてはいけないと思う
結婚、出産、住宅購入、転職、退職などがあれば、必要な現金や収入の安定性は変わります。投資経験が増えることで、自分が値下がりにどう反応するか分かってくることもあります。リスク許容度は一生固定する数字ではありません。
毎月は総資産、年1回はリスク許容度を見直す
毎日の値動きに合わせてリスク許容度を変える必要はありません。むしろ頻繁に方針を変えると、相場に振り回されやすくなります。
普段は総資産や現金残高を定期的に確認し、年に1回程度、または大きなライフイベントがあったときに「生活資金」「使う時期」「許容できる損失額」を見直す方法なら続けやすいでしょう。
毎月の確認方法は、毎月の総資産チェックを続けるメリットと確認ポイントも参考にしてください。
まとめ:リスク許容度は「何%まで平気か」ではなく生活から決める
リスク許容度は、値下がりに対する気持ちだけでは決まりません。生活防衛資金、近い将来の支出、収入の安定性、投資期間、実際の損失額を合わせて考える必要があります。
まず生活に必要なお金を投資資金から分け、次に「投資額が何%下がるか」ではなく「何円減ることになるか」を確認する。その金額でも生活と投資方針を維持できるか考える。この順番なら、自分の家計に合ったリスクの取り方を整理しやすくなります。
リスク許容度が整理できたら、次は現金・株式・債券・投資信託などをどのような役割で組み合わせるか、資産配分を考えていきます。
免責事項
この記事は、投資のリスク許容度や資産形成に関する一般的な情報提供を目的としたもので、特定の金融商品や投資行動を推奨するものではありません。掲載情報は正確性・最新性に配慮していますが、完全性を保証するものではありません。投資には元本割れを含む損失の可能性があり、実際の値動きは想定を超える場合があります。資産配分や投資判断は、ご自身の収入、生活費、資産状況、目的、投資期間、リスク許容度を踏まえて行ってください。必要に応じて金融機関、専門家、公的機関などの公式情報も確認してください。
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